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花の色

あの日見た花の色は

ずっとそばにいると思っていた
綺麗な花ほど先に摘まれていくんだ

問いかけた返答は孤独に
虚空に消えていく
全て投げ出したはずの両手から
零れ落ちる 砂のよう
時間がとまったままの僕を
きっと君は許さないだろう
振り上げた後悔に
帰る場所すらわからずに

鳴り響く静寂
静まり返る慟哭 号哭
あの頃にはもう戻れない
全ては変わった
自分でついた嘘に気づかず
鍵をかけて強引にしまい込む

一面の花畑の中で
どんな花を選ぶのか聞かれた
一番綺麗な花が欲しいと答えて
世界の真実の欠片を知った

あの日見た花の色は
今もまだ消えないままで
目を閉じても浮かぶなら
なんて名前をつけよう

夏の陽炎が幻を見せる
呼吸をしても苦しいままだった
手が届かないからなおのこと
あの日の明日がずっと欲しかった
誰も気に留めない路傍の花を
自分の真実を知る君が
綺麗だねって振り返るから
変わらないものもあると思えた

夜の帳の隠れん坊
打ち上がる花火 置き去りに
それぞれの道がまた一つに交差して

あの日見た花の色は
今もまだ褪せないままで
目を閉じても咲き誇り
ここにいるよと歌っている

もういいかい

宿り木に芽吹いた花に
久しく鳴らぬ鐘に
真夏に降る雪に
僕のすべてを知る君に

あの日失った絵の具の色に
もうどこにも在るはずのない色に
けれど確かに微笑む白に

もういいかい

鼓動

 

届いて


今を見失い
未来を嘆き
過去を消去しても
蝶の瞬き一つで変わる


星に手を伸ばした
不可逆に逆らった
それでも届かなかったとしても
なかったことにはできないから


陽だまりの片隅
泣いている君へ


届いて 届いて
この声が枯れたって叫ぶよ
明日に保証はない
それでも確かに鼓動は
続いてる


何度も 何度でも
繰り返したって構わないよ
今までとこれから
否定したくない
確かに鼓動は
響いてる


今を見定め
未来を望み
過去を肯定しても
蝶の瞬き一つで終わる


心はとうに擦り切れた
涙もとうに枯れ果てた
それでも届かなかったとしても
なかったことにはできないから


陽だまりの片隅
震える君へ


届いて 届いて
未来に向かって手を伸ばすよ
今ここにいる場所
過去に願ったこと
確かに続いてる


何度も 何度でも
最初の一歩を踏み出すから
今までとこれから
紡いでいくため
確かに鼓動は
響いてる


ねえ 聞こえる?

朝焼けに浮かぶ

 

朝焼けに浮かぶその横顔を見る
光に透く髪が綺麗だと思えた

あとどれほどの時が残ってるだろうか
光が満ちる時 この逢瀬も終わる

静謐な瞳に湛えた水面(みなも)に言う
どうかこの一瞬を焼き付けてくれないか

思い出に変わらないよう 忘れてしまわないよう
それ以外のすべてを失ってもいいから

灯のように鮮烈な景色は
閃光のように儚くもあり
白と黒を分かつ白と黒が混ざる
懐かしい面影をいつかと重ね

また会えるからと
手を振る君へと
もう少しだけ
今 今だけ

また泣いてるよと
微笑む君へと
もう少しだけ
今 今だけだから

幻のようにあやなす薄明(はくめい)は
たなびいた東雲(しののめ)の浮舟に似て
白と黒を汚す白と黒が祓う
仄見える面影もいつか遠くへ

また会えるからと
手を振る君へと
もう少しだけ
今 今だけ

また泣いてるよと
微笑む君へと
もう少しだけ
今 今だけだから

 

微笑む君に花束を


たとえれば すべての星失くした空のようで
空をきる 右手が仄か痛み 居場所探す


月が僕一人 照らす


ただ君の隣にいる それだけでよかったのに
君は笑みをなくすこと忘れたね
もう二度と君の「おはよう」それすら聞けないなら
胸の鼓動 とまれと切に願う

 

たとえれば すべての色失くした絵画のよう
花揺れる 視界が淡く痛み 居場所なくす

 

思い出は箱の中にしまっておくよ

 

ただ君の隣にいる それだけでよかったのに
微笑みだけ残して永久に眠る


時はなぜ こんなにも僕らを置き去りにする?
忘れたくないよ君とのすべて
もう二度と君の「またね」それすら聞けないなら
こんな世界 おわれと切に願う

瞼の裏の眩しさ 日向の匂い覚えてる
初めて見る景色も どこか懐かしさを感じた
歌を失くした金糸雀は もうどこへも行けないのか
灯火のない灯台は 誰かの帰路を照らせるだろうか


誰にも明かせず胸にしまい込んだ過去
誰にも知られず一人涙した夜


花が散りきる前に
君が眠り続けたとしても
君がどれだけ泣いていても
僕が隣で笑い続けるよ


暗く冷たい水底
水面の向こう輝くもの
ここではないどこかへと
ずっと行きたかっただけだった


流れていく時間に溺れそうだった過去
離れていく苦しさに息が詰まった夜


花が散りきる前に
君がその目覚まさずにいても
君がどれだけ無駄と言っても
僕が隣で笑い続けるよ


月明りを落とした
君の横顔に僕は
泣きそうなくらい救われた
全てを背負おうとする君に
僕だけは向き合いたかった
抱えた荷物を半分持とう
いつか終わりが来るなら
今も無意味だろうか
どれほど傷ついても
きっと全てに意味はある
残酷に流れゆく時に
それでも止まれと願った
叶わないと知るから
最後の一秒 君に捧ぐ


花が散りきる前に
光の蝶が溢れる前に
終わりを終わりにしないように
あの眩しさを信じて歌うよ


歌うよ 声はまだ出ないけど
怖いよ それでも
歌い続ける

 

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